2009年7月11日 星期六

「事故米」報道は何を伝えたのか(1):「実体的危険」への接近

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本稿では、『食品安全基本法』(2007年4月施行)総則第一条に明記されている「国、地方公共団体、及び食品関連事業者の責務並びに消費者の役割を明らかにする」といった「目的」を念頭に置きつつ、昨年発生した「事故米」報道を通じて、この「法的目的」が可能となる条件は何なのかを考えてゆきます  


  まず、昨年の「事故米」報道では、健康被害はないという安全情報を認識根拠としながら、「危険」の所在がそこから画定されてゆくという奇妙な現象が生じていました。つまり『新聞』では、お上による安全情報や、風評被害の防止策によって、逆に「消費者の不安」が募ったと報じられたのですが、ここで生まれる疑念は、健康被害がないのだから「事故米」の流通先を全て公開せよ、という要求の彼方にある知識とは一体何なのかということです

  私たちが今一度、心静かに考えるべきことは、安全情報を発信する国や地方公共団体、また流通先であったことを自律的に公開した食品関連事業者に対し、「消費者」はどういう「役割を明らかにする」べきなのかということではないのでしょうか

  その手掛かりとなる一つのコードは、当時の『新聞』報道では「危険レベルが低いというのなら、なおさら事実関係を明確に」しなければならないという要求が繰り返されていたにもかかわらず、記者や識者が言及した「事故米」という概念が内包している根本的な事実関係については、殆ど問題化されなかったということです

  そこで本稿では、さも「消費者」を代弁しているかのように振まう記者や識者が、「消費者」を代弁できるだけの「役割り」など果たしていなかったことを実証し、その上で消費者自らが問題を指摘する目を養うこと、それが現段階で必要とされる「消費者の役割」である、という提言をしてゆきます 





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1 則留言:

  1. 事故米報道では事故米の流通先リストを新聞紙上で見て驚いた覚えがあります。

    例えばある会社が製品の不良を気がついたとします。それを必ず回収するかとい

    えば、不良ではあるが、安全や健康上でなんら問題がない場合は、回収や作り直

    しコストを考え、回収までには至らない選択もあるでしょう。回収は会社の判断

    です。不良品回収に踏み切る場合も、該当製品名、製造日、ロットなどを公開

    し、すべての製品が不良ではない事を表明します。



    問題の殺虫剤メタミドホスが0.06ppm(今回検出の最大値)入っている事故米を

    体重50kgの人が185g(日本人一日の平均米摂取量)食べた場合の摂取量は

    0.0002mg/kg体重/dayで、ADI(TDIかも)=0.0006mg/kg体重/dayよりも低く、

    健康被害がないと言えます。

    事故米回収は三笠フーズは当然ですが、事故米であると「知らずに」使い、商品

    を出荷した会社の製品回収は個々の会社の判断に委ねるのが適切な行政上の指導

    だったと思います。健康被害はないと考えられるからです。私が「驚いた」の

    は、そのような手続きを無視して実名公開をした事であり、これでは逆に不安を

    あおると感じたからです。



    今回の事故米はもともと農水省が入札をしたミニマムアクセス(MA)米です。落

    札した商社が輸入はしたが、基準値を超える残留農薬の検出や輸送中の水ぬれの

    ため、政府が買い入れを中止して商社に返品したものが事故米で、商社は汚染の

    程度により飼料用(!)や工業用に限定し、食用に転用しないことを条件に売る

    そうです。このような「規定」があるのですから、おそらく事故米処理とは普通

    の事でしょう。また無税に近いMA米は日本国内に流通している米より安く関係者

    にとって経済効果はあるでしょう。事故米はさらに安いかもしれません。MA米輸

    入量は年間76.7万玄米tです。このうちどの程度事故米があるのか不明です

    が、事故米処理の構造的な問題(「食用に転用しないことの条件」を守っている

    かどうかの客観的監査の有無等)の分析と対策まで踏みこまず、「三笠フーズ」

    という「一企業のモラルの問題(ハザード)」と片付けて人々の記憶から消し去

    ってしまっているところに、農水省・商社・マスコミ協同の隠蔽を感じます。

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